星のお姫さま

好きなことだけ。

舞台「ようこそ、ミナト先生。」

 

新国立劇場 中劇場にて。


甲信越地方の山あいにある町、日永町。
一年前、この地を観光で訪れ、非常勤の音楽教師として働くことになった湊孝成。
人当たりがよく誰にも親身な彼は“ミナト先生”と慕われ、地元組からも移住組からも頼りにされるように。住民の間ではミナトがずっと町にいてくれるよう、診療所の医師・高梨由佳子とくっつける計画が持ち上がるほど。
だが一人暮らしの偏屈者、植村久志だけは心を開こうとしない。
そしてミナトはある秘密を抱えていた。
そんなある日、ひょんなことから日永町の動画がネットで拡散。町が世間から注目を集めると事態は大きく動き出す――。
 
 

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相葉くんは「君と見る千の夢」以来、12年ぶりとなる舞台。たまたまFCに入り直していた矢先に発表され、なんとかチケットをもぎ取ることに成功した。
脚本、演出は同作品と同じ、宮田慶子と金子ありさ
君と見る千の夢って、ラブストーリーだったこと以外特に記憶しているものがなくて、相葉くんってつくづく恋愛モノが苦手なんだなあという印象だった気がするが、、、定かではない(コラ)
「相葉くんの舞台に行くんだ!」と話すと、大抵の人には「えぇ?相葉くんって演技上手だったっけ?」と聞き返された。(本当の話)
 ファンの中でも彼の演技力の話になるとお通夜のようになってしまう人も居るが、私個人としては彼の魅力はそこではないので、さして考えたこともなかったのだが。
世間一般でいう彼のイメージはその通りなんだろう。彼の魅力もそこではない。けれども、演技力は無いにしても、表現力はあるわけで、、、ようは役次第ではハマると私は思っていて。マイガールとか、シッポとか。あと賛否両論あるだろうが、ラストホープは私は大好きだったな、、、。そして今回はnot恋愛もの、且つ相葉くんにハマりそうな役どころだったので大変ワクワクしておりました。
 
 
 
 
舞台はとある田舎町。人当たりもよく、面倒見もいい湊孝成は、「移住者組」であるのにも関わらず町民たちから「ミナト先生」と呼ばれ親しまれていた。
序盤はミナト先生の人柄の良さ、移住組と先住組との間にあるわだかまりをどうにか無くそうと奔走しつつ、町唯一の医師である高梨里佳子との苦笑、微笑ましいやり取りなどなど、、、恐らく世間一般の相葉雅紀のイメージそのままと言っていいような、屈託のない笑顔とリアクションで会場のおば様方の感嘆の声が漏れてしまうほど、相葉ワールド全開で始まった。
皆に慕われているミナト先生。そんな彼には「加害者家族」というもう一つの顔があったのだ。街の人から煙たがられ、1人孤独に離れに住む老人、松平健演じる植村久志。湊の父親が飲酒運転で起こした事故に巻き込まれて死亡した若き警官、その父親こそが植村だったのだ。
湊は自分の過去を隠し、塞ぎ込み他人との接触を断った植村の家に足繁く通い、交流を図ろうとしていた。
そんな中、町おこし事業の一環の動画配信に、着ぐるみに扮した湊が出演。途中町民たちとのいざこざの最中に着ぐるみを脱ぎ、湊の素顔がネットに配信されると、20年前の事故の加害者家族であることが町民に知れ渡ってしまう。植村をはじめ町民たちや、亡くなった植村の息子と幼馴染だったと話す者から、容赦のない追求を受ける湊。そして今までの温厚で穏やかな雰囲気は一変し、嫌味たっぷりになぜここに来たのかを語り始める。(ただここ、優しく穏やかなみんなのミナト先生が豹変するところが見どころなのだろうが、イマイチ物足りなかったかな、、、そこが相葉雅紀相葉雅紀たる所以なのだが、、、)
1年前、湊がこの町にやってきたのには理由があった。湊の母親がガンでこの世を去る時、夫のしたことは自分の責任でもあるのではないか、と未練を残し亡くなった。母親の葬式の時に10数年ぶりに父親から連絡があり、その時に約束をしたのだ。「一緒に謝りに行こう」と。その後、刑期を終えた父親から連絡があり、植村に謝罪をしに行くことになったのが、1年前。待てど暮らせど、父親は来なかった。湊は、仕方なしにこの町で過ごしながら待つことにしたのだった。
全てを話した湊はひとり、町を出て行く支度を始めるのだった。ミナト先生と持て囃していた町民たちも、誰もその名を出すことはなくなった。
心配して様子を見にきた及川、植村や高梨に自分の気持ちを打ち明ける湊。加害者の家族というだけで受けてきた偏見や執拗な迷惑行為、生きて行くことに必死になりすぎて、被害者たちのことを考えてもみていなかったこと。それを理由にして、色んなことから逃げていた過去。そんな自分でも、居てもいいと思わせてくれたこの町にずっと居たいと思っていたこと。そんな姿を見た植村は湊に「自分のために、胸を張って生きろ」と優しく声をかける。
この辺りから相葉くんは鼻水も涙も垂れ流しで泣きっぱなしだったなあ。鼻水がびっくりするほど垂れていたので思わずティッシュを投げ入れそうになりましたよ。
クライマックス、町を出て行く直前の湊に(引っ掻き回し役だった)濱田龍臣演じる野村伊吹が声をかける。野村は、家族が皆この町を出て行く中、ひとり町に残り続けている青年である。町おこしや湊に関心がさほどなく、斜に構えたよくいるひねくれ者だ。湊が加害者家族であることを植村に告げ口したのも彼である。そんな野村が、皆があんなことがあってもミナト先生を待っていると伝える。そこに湊からの置き手紙を見た高梨が走ってくる。自分はここで湊のことを待っていると。そしてまた湊と出会えたら、初めましてのフリをして、こう言うと。
「ようこそ、ミナト先生」


いや〜とにかく濱田龍臣くんがでっかくなってて私はそれにびっくりしっぱなしでしたね!!!(そこ?)怪物くんに出てきたときから時が止まってましたので、まさかあんなにデカくなって声変わりもしているとは、、、(当たり前)
所々噛んじゃっていたのはご愛嬌、長台詞も鬼気迫る演技も立派にやり遂げていましたよ。途中、連絡が途絶えていた父親と電話が通じた場面。電話を切った後、物に当たるシーンがあるんですね。バンッて襖開けて、ガンって何かを蹴るんですけれども、そこが割と私は好きでしたね、、、好きだった人いるかな、、、いるよね、、、
物語としては、コロナ禍での田舎移住、ネット社会の晒し上げ、加害者家族の問題、田舎ならではの閉鎖的環境、などなど昨今の問題を取り上げたような印象。時代に沿ったテーマで面白くもあったけど、後半あいばくんが泣きっぱなしだったのがなあ、、、いやいいんだけど。彼はとてもよく頑張っていたし、、、。周りの役者さん、特に松平さんはさすがとしか言いようがない。彼の迫真の演技に相葉くんも吊られてるんだろうなあ。
カテコで、松平さんに何か耳打ちをされて屈託のない笑顔を見せていた相葉くんを見て、変わってないんだなあとしみじみ。3回も出てきてくれて、その度にニコニコしながらありがとうございますと言いながら深々と頭を下げているその姿は3年前と何も変わっていなくて、元気な姿を見れて良かったなと思いました。
新国立劇場は初めてだったけれど、やはり舞台のために作り直された真新しいステージはとても広く、プロジェクションマッピングやさまざまな舞台装置を駆使した演出がなされていて、圧巻だった。普段小さな劇場で舞台装置も一つしかないようなものしか見ていなかった私にとっては、映画を見ているような感覚だった。
悔しいのは、これを何度も見れないこと。舞台はナマモノであり、その日その日でどんどん違うものになってゆく。その過程が面白いので、私は基本的に数回は足を運んでいるのだが、今回はそれができない。
なんにせよ、12年振りの舞台出演を見届けられてよかった。あの頃よりも遥かに成長した役者としての相葉くんは、文字通り汗水垂らして必死に足掻いていました。千秋楽まで、どうか駆け抜けられますように。

 

 

P.S.無事に千秋楽を迎えられたということで記事をアップしてみます。本当に、お疲れ様でした。