星のお姫さま

好きなことだけ。

文豪ストレイドッグス STORM BRINGER

 

アニメ15歳の双黒の話には続編があって、先日読了したけど衝撃が強すぎてなかなか昇華できずにいたんですけど最近ようやく受け入れられたので。
 
『荒覇吐事件』から1年、ポートマフィアに加入した中原中也の前に現れたのは暗殺王ポ ール・ヴェルレエヌ。「一緒に来い、中也」中也を弟と呼び、その出生の秘密を知る男によって、横浜に再び嵐が巻き起こる――!(公式サイトより抜粋)
 
 
 
 
 
大いにネタバレあり。というか全編の概要載せてます。この考察は独断と偏見であり、信憑性に著しく欠けますので悪しからず。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【CODE:01 研究者共が思いつきで打ち込んだ、たかが2383行のプログラム】
荒覇吐事件から1年後、中也はスピード出世を果たし、高層マンションの一室を与えられ単調な日々を過ごしているところから話は始まる。
そんな中也にもしっかり友達はいるようだ。ワイヤー使いのピアノマン、乗り物を自由自在に操る阿呆鳥:アルバトロス、闇医者の外科医:ドク、広報役の現役人気俳優の広報官:リップマン、異能を持たない殺し屋の冷血:アイスマン。彼ら若手会のメンバーは中也の過去に関する資料を探し出し、ポートマフィア加入1周年のお祝い品としてプレゼントする。その資料の中には幼少期と思われる中也とその父親と思われる男性が並んでいる写真もあり、中也は自分が人間であるのではという期待をにじませていた。
この時の挿絵の5人に祝われて唖然とした表情の中也が非常に可愛い。まだマフィアに加入して1年、それも敵対組織の元長だった彼が実力でのし上がり、皆に愛されている様がよく伝わる。
しかし、楽しい宴の席は長くは続かず、謎の欧州からの人工知能捜査官アダム・フランケンシュタインが乱入してくる。アダムは荒覇吐事件の首謀者であるランボオの同僚、ポール・ヴェルエレヌが中也暗殺を目論んでいること、彼が中也の兄だと告げる。ヴェルエレヌはランボオとの戦いで敗れ死んでいるはずだと反論する中也にヴェルエレヌが起こした他国の要人暗殺事件の概要を説明し彼が生きていること、そして次の狙いは中也だと話す。
このアダムがまたいい味を出している。AIで稼働しているアダムと中也は最初かなり衝突する。義理人情に厚い中也と、合理性を求めるアダム。ふたりの掛け合いのちぐはぐ具合がアダムが機械であることを際立たせている。
アダムの交渉を一刀両断した中也は単独行動に出るが、その後ヴェルエレヌと対峙し、その実力差に打ちのめされてしまう。そして自分を兄と名乗り、中也は異能を取り出すためだけに造られた「2383行の文字列で構成された人格式」であると話す。幼少期の資料は偽装情報だった、ここにいるべきではない、一緒に来いと言うヴェルエレヌに困惑する中也だったが、友人5人が彼の手によって殺されたと知り激昂する。しかし圧倒的な力を前に為す術もなく、ヴェルエレヌに無理やり「門を開かれて」しまう。この時点で知ったのだが、これまで中也は汚辱形態を使役してきていなかったらしい。(というか封印されていた?)それであんだけ強かったのか・・・ 門が開かれた時間は僅か0.3秒であったが、一瞬引き出された荒覇吐の力によって、あたり一帯は重力に飲み込まれさら地になってしまう。荒覇吐を引き出されたことで苦しむ中也の前に太宰が現れ、異能を無効化し事態は一旦は収束。そして、自身の出生の真実を知るために中也はアダムと手を組むことにしたのだった。
 
【CODE:02 死んだ人間は、どのような感情も抱かない】
ヴェルエレヌが中也と縁のある人物を殺そうとしていることが判明し、標的と思われた羊の元構成員の白瀬に会うことに。暗殺されるかもしれないと告げられた白瀬は逃走し警察に捕まってしまう。放っておけない中也は白瀬を奪還するが、その最中、昔馴染みの村瀬刑事が殺されてしまう。
彼がヴェルエレヌの本当の標的であり、白瀬は囮。ただの刑事が殺されたのは、彼の兄「N」と呼ばれる人物が『荒覇吐計画』の真相を知る人物だったからであった。(ヴェルエレヌは中也が真相を知れば自分の元へ来なくなると危惧したらしい)
その間にヴェルエレヌと密会し、なんらかの情報を渡している太宰の姿があった。相変わらず何を考えているのかわからない、が、まあ最終的には中也のところに戻るんでしょう。
 
 
【CODE:03 僕は人間として中也が苦しむのを見たい】
Nの研究施設に中也、アダム、白瀬の3人で乗り込む。このあたりから話がややこしくなってくるが、Nによると、
・人間以外の生命体が異能力を持つことは不可能であり、いち生命体に宿る異能力は一つである
・異能力の出力には限界があるが、異能力の「特異点」を発生させることによりそのエネルギーは無限大となる=この無限のエネルギーが中也というか荒覇吐の重力の正体
特異点を生み出す方法はいろいろあるようだが、「矛盾する異能をぶつける」ことで「矛盾型特異点」というものが発生することがある(DEAD APPELの澁澤龍彦がよくわからん怪物になったのはこれか?)
・矛盾型特異点を発生させるためには二つ以上の異能が必要となるが、例外として自分自身の異能を自己に使うことで特異点を発生させられる異能力者が存在する=その異能のことを「自己矛盾型異能」と呼ぶ
・自己矛盾型異能が発動されると、高密度の空間歪曲が起こり、当事者は死んでしまう
・この自己矛盾型異能の膨大なエネルギーを制御し、兵器にしようと目論んだのが異能先進国の仏国
・仏国は人間だけが異能を使役できることから、人間の「精神」で膨大な異能を制御しようと考えた
・人格式と複製培養された肉体を異能側に人間だと思い込ませることで膨大なエネルギーを使役できるようにした
・その結果生み出されたのが異能諜報員ポール・ヴェルエレヌであり、彼は特異点が発生させる重力を操る
・以上の情報を得た日本で行われていた実験が「荒覇吐計画」
 
Nは荒覇吐計画の実態は「中也だけが知るべきだ」と、アダム、白瀬から中也を引き離す。実際の研究施設は中也の異能発動により消滅しているが、それと対になるように造られているというその場所を目の当たりにした中也は研究所にいた頃の記憶を思い出す。
研究所には自己矛盾型異能を持つという中也にそっくりな子供が実験体として保管されていた。装置のおかげで特異点の重力に潰されず、なんとか生命を維持しているその子供はNの手によって試験管から出され、中也の目の前で死んでしまう。そしてNは、自分が中也の躰を「荒覇吐の重力に耐えられるようにデザインした」と話す。
ここから考察するに、この子供は身体が重力に耐え切れず死んでしまったわけで、身体が重力に耐えられさえすれば荒覇吐の器(という言い方が合っているかは不明だが)になり得るのでは?ちなみにここまで来るのに200頁かかっており、まだ半分しか話は進んでいないのである。
 
Nの真の目的は、中也を殺しヴェルエレヌという脅威を遠ざけるため、中也から荒覇吐を「取り出す」ことだった。実際は、取り出すというよりも中也と荒覇吐のつながりを断ち、中原中也の人格式を削除しようとしていたのだが。荒覇吐の封印を解くには制御呪言を唱える必要があり、同時にこれは「封印指示式を初期化するコード」でもあった。このあたりから話がさらに難しくなってくるのですが、この「制御呪言」が「封印指示式を初期化するコード」であるってところが割と肝なので、覚えておくと便利かもしれない。まあ初期化のためのパスワードみたいなもんか?
Nは中也が制御呪言を唱えるよう、ありとあらゆる方法で拷問を続けるが(ひどい)中也の強靭な肉体と精神のために苦戦する。そうこうしているうちにヴェルエレヌが乱入し、愛しの弟を殺させまいと中也を救出し脱走を謀る。
 
中也を探そうと奔走するアダムと白瀬の前に、ランボオの手記なるものを持った太宰が現れ、これまでの出来事はすべて「ヴェルエレヌによる『森鴎外暗殺』を阻止し、脅威である暗殺王を逆暗殺するため」に自分が仕組んだことであると話す。(暗殺王ポール・ヴェルエレヌは各国の要人を暗殺しており、次の狙いが森鴎外だと太宰は感づいていたよう。)そしてこのままでは「中也がNを殺し、人間では無くなってしまう。」とも話す。人間として苦しむ中也が見たいという太宰は、アダムたちとともに中也を助けに行くことに。その道すがら太宰はアダムにNが嘘をついている可能性を示唆する。中也が人間であるという証拠がないのと同じに、人間ではないという証拠もない、と。
太宰たちが中也を探している間、中也はヴェルエレヌの指導のもと暴走しかけていた荒覇吐を制御し、自己の精神を取り戻していた。Nを殺そうと躍起になっている中也に加勢するヴェルエレヌ。自分を殺すのは間違いだと反論するN。中也は「明日なんて知ったことじゃないぜ」「いつもやりたいようにやってきた。守りたい奴を守り、気に入らない奴をぶっ飛ばしてきた。今日もそうするだけだ」と言い、Nではなくヴェルエレヌに渾身の一発をぶち込む。友人5人の命を奪ったヴェルエレヌを中也が許すはずもなく、攻撃を繰り返す。生まれたことを憎み、破壊の道を進むべきだと話すヴェルエレヌに中也は「俺は−−−そんな風には思わねえよ」と言い切る。なぜなら、中也は独りではなかった。中也にはポートマフィアの仲間や羊の構成員たちがいた。死んだ仲間が中也を鼓舞していたのだ。
ここでも中也の人間性がうかがえる。ヴェルエレヌの話を聞いた上で、「あんたはそうかもしれねえ」と一度肯定している。その生い立ちから暗殺の王となったヴェルエレヌの孤独を理解した上で、自分は違う道を進んでいることをわかってるんだよな。真っ向から否定しないのは、その孤独が中也にも少なからずあるから。わかるからこそ否定できないのが悲しい。中也の優しさが際立ち、切なさがこみ上げる。(すでにここで半泣き)
 
膠着状態となり、ヴェルエレヌは先にNを殺そうとする。が、Nは自分を殺したら「優しき森の秘密」も失われるぞと脅す。その言葉に強く反応するヴェルエレヌ。
ここからの話がまたややこしい。心が折れそうだが続ける。
生死を彷徨うほどの重症を負った中也の前に、死んだはずのもうひとりの中也の白骨が異能で再起し中也を殺そうとする。丁度中也を追っていたアダムたちがこの場に追いつく。白瀬は中也を助けることに抵抗しひとりで離脱しようと試みるが、ひどく傷つき弱った中也を放っておけず、中也を助けることにする。
そうしてアダム、太宰、白瀬と合流した中也。しかし、ヴェルエレヌはNを確保したまま外に逃走してしまう。
 
【CODE:04 汝、陰鬱なる汚辱の許容よ
ランボオの手記に記載されていることを抜粋、要約するとこうだ。
某日、諜報員ランボオ反政府運動の首謀者の異能力者、通称「牧神」を殺す仕事を任されていた。牧神はたったひとりで作りあげた、重力を使役する人工異能生命体「黒の12号」を指示式を用いて操りランボオと対峙した。しかし、指示式の入力方法を把握していたランボオはその入力装置を破壊、自我を取り戻した黒の12号が施設ごと牧神を殺害し、自体が収束したのだった。
その後意識を失った黒の12号を自国に持ち帰ったランボオは上層部から、黒の12号を「諜報員にするために指導、監督」するよう命じられる。諜報員となり、自身の名を捨て家族、友人、恋人を捨てたランボオは人との繋がりができたことに心踊らせ、彼を自身の本当の名である「ポール・ヴェルエレヌ」と名付けた
その後手記は、「『優しき森の秘密』の解読に成功した、そこにはヴェルエレヌのーーー」というところで終了している。
 
場面は変わり、Nは超高層にあるタワークレーンに連れさられていた。「優しき森の秘密」とは、牧神が書いた人工異能の生成手順書の最終章の題名であった。ヴェルエレヌが得た情報では最終章6頁が抜き取られており、その抜き取られた部分について知っていることを全て話せとNを脅す。Nは抜き取られた頁は自分が情報を得たときには既に無かった、手順書を回収したランボオが意図的に抜き取ったと話す。それを聞いたヴェルエレヌは動揺を見せる。ランボオというコード名はヴェルエレヌのオリジナル名であった。名前を交換しようと提案してきたのはランボオであり、ふたりは組織内で相棒であり、親友であった。ヴェルエレヌにとっても唯一無二の存在だったのだ。しかし、ヴェルエレヌはランボオのことが「好きではなかった」と悲しげに呟く。
 
ヴェルエレヌはNを置き去りにすると、森鴎外暗殺に動く。その動きを察知していた太宰は、森を暗殺しそびれたヴェルエレヌと対峙する。感情で動きすぎて動きが丸分かりだと諭す太宰に、弟に執着して何が悪いと反論するヴェルエレヌ。そこで太宰は問う、「中也が貴方の弟だと、本気で信じているんですか?」と。太宰は、Nの研究施設の職員に中也の文字式を読み取る方法を聞き出せばすぐにわかることだ、と付け足す。「人工文字列で、あんなに僕が嫌悪するほどの人間性を造れるはずがないと、中也が人間であると確信しているようだった。
そして、森鴎外の居場所を吐くよう太宰を攻撃しようとした刹那、ヴェルエレヌに攻撃が降りかかる。太宰の作戦が成功したのだ。あらかじめ配置していたポートマフィアの軍勢が一斉にヴェルエレヌめがけて膨大な攻撃を繰り出す。最強の暗殺王と恐れられたヴェルエレヌが嵐のように降り注ぐ砲弾にひるむ。それもそのはず、寝ても覚めても、どうすれば中也に厭がらせできるか」ばかり考えてた太宰の考案した作戦なのだから。対重力異能への対策は完璧なのだ。ここでも太宰の中也へのお熱っぷりが伺えて、非常に良い。
ポートマフィアの猛攻撃に為す術なく傷つくヴェルエレヌは苦肉の策で、「門」を開き人格指示式を解除し身体の主導権を人工異能に明け渡し、周りのもの全てをただ飲み込む重力源となった。
マフィアの戦力が次々に削がれる中、太宰はこの事態も予測しており、次の一手を打とうとしていた。
 
ーーーその2時間前、合流した太宰、中也、アダム、白瀬は太宰からことの計画を聞かされていた。中也に逆さ釣りにされながらも平然な顔をして作戦内容を説明する太宰。
森鴎外の乗る列車にヴェルエレヌを誘い出し、そこにマフィアの軍勢を配置、奇襲をかける。もちろん膨大な被害が出ても市民に被害が出ない郊外でだ。追い詰められたヴェルエレヌは門を開くだろう、そこで中也が航空機で接近、中也の重力でヴェルエレヌの重力を中和する作戦だ。自我を放棄したヴェルエレヌは自身に敵意を向けるものだけに自動的に攻撃をし続ける。そして「慈しみを込めて毒を呑ませる」と太宰は締めくくる。ヴェルエレヌから意識を奪い、自分たちの動きを悟られないようにした上で弱点である毒で殺す。それが太宰の作戦だった。
 
ここ、絶対にアニメでやってほしい、、、中也は絶対つまんなそうな顔して逆さ釣りにしているし太宰もなんてことない顔して吊るされているんだろうな。なんで挿絵ないのここ。いつも頭脳戦では太宰に何歩も先を行かれている中也が当然のように太宰に報復している光景は少し珍しい。が、きっと本編に入っていないだけで普段からふたりはこんな風にやりあっていたのかと思うと愛おしさがこみ上げてくる。
太宰への復讐の訳を、「時間稼ぎのために、中也が拷問を受けることをわかっていた上でNの情報を明け渡し、結果として死なずに済んだはずの村瀬刑事まで巻き込んだこと」としていた。自分のことだけじゃなく、ちゃんと犠牲になった人のために報復を与えるのが中也らしい。ちなみに、復讐の方法は190通りほどあるが、下から2番目に優しい方法とのこと。そんなにお互い常にお互いのことばかり考えてるのか、、、尊、、、、
 
アダムが対ヴェルエレヌ用の毒を作成し、それを持った中也がアダムとともに空中を滑空する。太宰は中也に再三に渡り、「敵意を出すな」と警告した。意識のないヴェルエレヌは敵意に対してのみ反応し巨大な重力子弾攻撃を繰り出してくるからだ。そして中也に攻撃が加わりそうになると地上のマフィア部隊がわざと無謀な攻撃を繰り出し、そちらに意識を逸らし、中也が接近できるようにサポートしていた。アダムの協力の元、ヴェルエレヌに接近することに成功した中也。毒を与えようとした刹那、ヴェルエレヌの門が閉じた。中也の門を強制的に開いたあの時、次に中也が自分に触れた時に「門が閉じる」よう文字式を組み込んでいたのだ、と自我を取り戻したヴェルエレヌは中也に説明する。
ランボオは門を開き自我を失った状態のことを「獣性形態」と呼んでおり、それを解除するための方法まで考えつき、ヴェルエレヌに教えていた。ランボオは常にヴェルエレヌのために何ができるか考えていて、それにヴェルエレヌも気づいていた。それでもなお世界を恨んだヴェルエレヌは、孤独を埋めるため中也を誘拐、相棒であったランボオを裏切ってしまった。それを聞き、いつか自分もヴェルエレヌのように世界を恨む時が来るかもしれない、と話す中也。自身の出生の謎に関してここまで残酷な事実を突きつけられてもなお、未だ世界を恨んでなどいない弟に驚くヴェルエレヌに、中也は続ける。憎い奴はいるが全員ではない、一人で生きてるんじゃねえことを知っている。昔はあんたもそうだったんじゃねえのか?。そして一瞬の動揺を見せたヴェルエレヌにボロボロになったアダムが奇襲をかけ、麻酔でヴェルエレヌを眠らせることに成功するのだった。
 
ランボオの手記には続きがあった。擂鉢街の悪夢、ランボオとヴェルエレヌが中也回収作戦を決行する前夜の記録だ。その日はちょうどランボオとヴェルエレヌが出会った日から丸四年が経過していた。その日をヴェルエレヌの誕生日と決めたランボオは誕生日プレゼントを用意し、ヴェルエレヌの誕生を祝った。不審がるヴェルエレヌにランボオは誕生日を祝うということは「君が生誕したことは、『祝われる価値のあること』だと示唆することだ」と説明する。そして、被ることで”外部からの指示式による意識干渉を跳ね返す”金属を内側に施した黒帽子をプレゼントした。ランボオが牧神の研究施設から奪取したものを改造し作られたものだった。ヴェルエレヌが少しでも「自分の意識で行動する人間」に近づけるように…。
 
ヴェルエレヌを無事確保した中也とアダムのもとに、太宰から連絡が入る。Nを救助していた班からの連絡が途絶えた、と。いつの間にNを確保していた太宰。ここで中也は、”中也が人間か否かを確認するための方法を知るNの確保”が太宰の本当の目的だったことに気づく。ボスの暗殺阻止はその計画の一部に過ぎなかったのだ。
消息を絶っていたNは自身をた助け、移送していたポートマフィアを薬液で溶かし車両から脱出。謎の金属片を上空へ向かって信号弾を発射、粉々になった金属片が飛び出しそれぞれが音楽信号を奏でていた。突如ヴェルエレヌは苦しみ出し、中也に「逃げろ」と言い残し、中也に重力を使い、自分から遠ざけるように吹き飛ばした。
ヴェルエレヌは黒い巨獣の姿となり、周りのすべてを飲み込んでしまっている。その姿を遠くから眺めながらNは、「これが『優しき森の秘密』の真実だ」と高らかに言った。ランボオが抜き取った手順書の頁は、ヴェルエレヌの真の姿”魔獣 ギーヴル”への戻し方であり、それをNは知っていたのだ。魔獣ギーヴルの姿は、まさしく「竜」であると記載されている。
やはり異能において竜、というのは一つのキーワードらしい。デップルで特異点となった魔物も竜の姿をしていたし。
 
突き飛ばされた中也はもうろうとする意識の中でヴェルエレヌの記憶を見ていた。ーーー9年前、中也を研究施設から奪取した時のものだ。中也を抱えたヴェルエレヌがランボオへ、「もう一度自分を救う」ために中也は渡さない、と話し、二人が決裂する場面だ。そしてランボオはヴェルエレヌにこう言い残す。「ポール、必ず君を連れて帰る、たとえ手足をちぎり取ってでも」と。ーーー
そこで中也は意識を取り戻す。アダムと中也はギーヴルを倒すための策を考えるが、アダムは自分が犠牲になることを中也に隠したまま作戦を決行する。
アダムの本当の作戦に気づいた中也だったが時すでに遅く、なぜこんなことをしたのかと怒る中也。もともと、有事の際には知り得た国家機密を自身もろとも「ヴェルエレヌごと」焼却し消滅させることができるように、人工知能捜査官のアダムが投入されていたのだと、アダムは悲し気に中也に白状する。アダムの作戦により中也は太宰と合流することに成功するが、アダムはヴェルエレヌと共に巨大な熱球に飲み込まれてしまう。
 
しかし、それだけではギーヴルの動きを止めることはできなかった。横浜の市街地めがけて攻撃を始めたのだ。このままでは帰る家がなくなるばかりか、横浜の壊滅は免れない。
苦肉の策で、中也は先刻見たヴェルエレヌの記憶を頼りに作戦を閃く。制御呪言を唱え、中也の指示式を初期化し門を開き、荒覇吐を解放することでギーヴルに荒覇吐をぶつけるというものだった。ただ門を開くだけでは獣性形態となり意識がなくなってしまうが、ランボオがヴェルエレヌにプレゼントした帽子を太宰は持っていた。それを使えば中也は自分の意思で荒覇吐を使役することができるのだ。
しかし、問題が一つあった。門を開くために唱える制御呪言はこれまでの指示式を初期化してしまうため、中也に過去に「記憶抹消の指示式が使われていたか否か」がわからなくなってしまうことだった。つまり、制御呪言を唱えてしまえば、中也の過去を辿れなくなり、中也が「人間なのか、人工的に造られたものなのか」を知る術がなくなってしまうのだ。
太宰は、ヴェルエレヌがこうなったのは「自分が人間ではない」という呪いに苛まれてしまったからだ、とした上で中也に作戦を決行するかどうかを選ばせる。しかし中也は考える暇もなく、動き出していた。彼は空中を滑空しながら、自分のために消滅した友人、アダムの言葉を思い出していた。「貴方を守れるのです、当機はそれで満足ですよ。」人工知能であるアダムには魂がないはずだが、魂がない機械から紡ぎ出されたこの言葉の重み。中也は気づいたのだ、魂の有無は関係がないと。機械であるはずのアダムとのやりとりを思い出しながら、中也は唱えた。
 
「汝、陰鬱なる汚辱の許容よ、更めて我を目覚ますことなかれ
 
その後中也はボロボロになりながらも巨獣ギーヴルを制圧することに成功する。もちろん最後は太宰が中也の異能を無効化し、門を閉鎖。全てが終わったのだった。
 
【epilogue】
この事件はのちに《暗殺王事件》と名付けられた。仏国や英国の情報操作によりポートマフィアは実害こそ多かったが、軍警や政府からの追求を免れていた。
事件から2ヶ月後、中也は倫敦に留学する白瀬を見送りに来ていた。アルバトロスの形見のバイクに乗り、ヴェルエレヌの帽子を被って。白瀬と中也は和解し、それぞれの道を見つけたのだった。
白瀬を見送った中也の背後には正装した太宰があった。事件の事後捜査のためにやってきた英国高官たちのお相手をしなければならなかった。思惑渦巻く豪華客船に現れたのは、アダムを作ったという少女、ウォルストンクラフト博士だった。中也は少女の博士に謝罪した、最高傑作を壊してしまって悪かった、と。そんな中也に少女は、アダムが最高傑作であったのは「自ら考え、行動することができる」知能を搭載させていたからだったと話す。だから、アダムが中也を守るために自分を犠牲にしたのも、中也に守る価値があったからだろう、気にするな、と優しく声をかける。そして、戦闘中に使用し、戦闘が終結したあとにいくら捜索しても見つからなかったアダムの片腕を取り出した。驚く中也をよそに、少女が持ってきていた巨大な旅行バッグからアダムが出現し、腕を受け取りながらこう言った。「アンドロイドジョークを聞きたいですか、中也様?」
 
英国の事後調査は滞りなく終了し、皆自国へ帰国していった。ーーーヴェルエレヌが生きていると知らずに。戦闘終結後、死の淵を彷徨っていたヴェルエレヌのもとに姿を現したのは死んだはずのアルチュール・ランボオだったランボオとの再会に驚くヴェルエレヌ。自分を助け、慈しんでくれた相手を裏切り、殺そうとしたがために記憶を失い、異国の地で死に絶えたランボオ。自分を呪い殺しにきたのだろう、と話すが、ランボオはそれを否定した。ランボオは死してもなお、ヴェルエレヌのことを想い、謝りたかったと話す。ヴェルエレヌが人間であれるよう、人間に近づけるようにとしていたことは、ただの同情であったと。そうして、死の淵で本当にできることが何かを思いついたと話す。突如、ランボオの異能がヴェルエレヌめがけて発動した。
ランボオの異能力の正体は「死んだ人間を異能生命体に変換し、自己の亜空間内でのみ使役できる」というものだった。ランボオはその異能を自分自身に使い、自分自身を自己矛盾型特異点に変換したのだった。ヴェルエレヌを助けるために。ランボオから発生した特異点は、魔獣リーヴルの特異点の代わりとしてヴェルエレヌに取り込まれ、一命を取り留めたのだった。無くしてからようやく大切なことに気付いたヴェルエレヌは、ただ謝り続けるしかできなかった。
その後ポートマフィアのシェルターに幽閉されたヴェルエレヌは最初こそ読書と詩作をし過ごしていたが、そのうちにランボオと同じことを始めた。後進の育成だ。泉鏡花、銀などを始めとするマフィアの精鋭たちはみな彼に暗殺の極意を叩き込まれている。そうして彼は現在、ポートマフィアの5大幹部の一人にまで上り詰めたのだった。
 
中也はボスからの指令で、ある開業医夫婦の元にきていた。極秘任務だと言われたその場所は緑豊かなのどかな場所で、夫婦が庭でお茶をしていたところだった。それを遠くから眺めながら、中也はボスに説明されたことを思い出していた。
人工異能生命体は、オリジナルの異能者の細胞を培養して作られているために解剖学的には個体を判別することは不可能である。全く同じものであるからだ。中也の指示式が初期化されてしまった以上、中也がオリジナルの異能者なのか、そこから作り出された人工異能生命体なのかを判別する術は失われてしまっていた。が、中也は気にしていなかった。あの時の判断が最善であり、やり直したとしても自分の選択を変えることはないとわかっているから。しかし、そんな中也に森は言った。オリジナルと人工異能生命体にも違いがある、オリジナルであれば異能を特異点化されるより前に受けた傷跡が残るはずだ、と。中也には右手の手首に黒い点のようになっている傷がある。いつ受けた傷なのか中也は把握していなかったが、重力使いである中也がこのような細かい傷を負うことは稀である。中也は、その傷がなんだか自分のエンブレムのように感じていたのだった。
ところでこの夫婦には以前子供がいた。腕白で両親想いのその子は、自分より年上の少年を打ち倒すほどであった。相手が武器として鉛筆を突き刺さしてきても、全く怯むことがなかったという。ここまで話したあとに森鴎外はこう続けた。鉛筆の芯などの炭素は人体との反応性が低いから、刺されて身体の中に残ってもそのままの状態になっていることが多い、と。そして最後にこう告げた。「その少年が鉛筆を刺された場所は、右手首の付け根だそうだ。」
とうとう中也はその夫婦に会うことなくその場を後にした。それでいいのかい、と声をかけるボスに「俺の家族は、ポートマフィアですから」と淡々と告げる。最後に森への感謝の言葉を添えて。
 
 

 

 

結局中也は一体何なのかが400頁に渡って書かれてたんだけど、いや〜〜〜長かった!!!正直途中話が難しすぎて一周しただけでは理解できなくて、時間がかかってもいいから絶対に文字に起こすと決めてました。
途中拷問を受ける中也の描写がきっついし、結局中也が人間なのか人工異能なのかはわからないし‬‪真実を追い求めてた中也のことを思うと非常につらいし憤りすら感じた。けど、最終的にはみんなに救いがある、いい終わり方だったんじゃないかなと。ところどころで小出しにされていた伏線も最終的にはほぼ全部回収され、400頁あったとは思えないほどスルスルと読み進めてしまった。
太宰が中也に汚辱を発動させるかどうか選ばせた時に間髪入れず作戦を開始したり、仲間を皆殺しにしたヴェルエレヌを最終的には孤独から救い出そうとしたり、自分が人間でもそうでなくても、「独り」ではないとわかってるところが‬‪捻くれず愚直な中原中也というキャラを際立たせていて、さらに中也のことを好きになってしまったな。おそらく中也はオリジナルで人工的に造られた物ではない、のだと思う。まあでも中也はきっと自分が何なのかではなく、どう生きるかが大事だと随分前から気づいてたんだろうな。‬‪
ヴェルエレヌが最後にはランボオと和解できたのも良かった。自分が孤独だと思い込み、破滅の道を選んでしまったヴェルエレヌ。中也は、たまたま仲間に恵まれただけで自分もそうなる可能性はあったと言っていたけど、やっぱり私にはそうは思えなくて。羊にいたときもポートマフィアに入ってからも常に中也は‬‪仲間を大事にしていたし、きっとその前もそうやって自分より他の誰かを大事にしていたんだろうな。それは自分が「人間ではない何かかもしれない」から、自分を大事にできない反動だったのかもしれない。それでもそう生きていくことで中也に救われた人はきっと大勢いて、中也についていきたいと思った‪人も大勢いたはず。中也はそれにちゃんと気づいていたし、自分が何者なのかよりもどう在りたいのかを重要視していたように思う。だからこそ己に足りないものがなんだったのかを知るためにもポートマフィアに入ることにしたんじゃないだろうか。
それに、中也を人間であると信じていた太宰もよかったな〜〜〜!今回も太宰に一本取られたって感じになるかと思いきや、ちゃんと中也は自分で自分自身の問題を解決し、兄かもしれないヴェルエレヌを救うことに成功していた。これだから双黒はシャブいんだよな。
それに、最初は相入れなかったアダムと中也が事件を通して信頼関係で結ばれていくようになる描写が細かくてよかった。アダムのしゃべる内容もどんどん人間らしくなってきていて、とてもAI搭載の機械とは思えない。
 
このアダム、ヴェルエレヌ、中也の三人が「人間であることとは」という今回の根本的なテーマの答えなのではないかと思う。人間とは、自分で考え、選択し行動することのできる唯一の生命体であると考えられている。だとしたら、自分は人間ではない、と呪いをかけ破滅の道を進んだヴェルエレヌも、任務よりも中也を助けるために自己を犠牲にするという選択をした人工知能のアダムも、そして、自己の過去に囚われず、自分の好きなように生きて行くと決めた中也も皆、人工物などではなく魂の宿る人ということになりはしないだろうか。
朝霧先生が最終的に何を伝えたかったのかは明言されてないのでこの辺は独断と偏見にまみれた私見に過ぎないが、私はそう思うことにした。じゃないと中也が報われないし…。(小声)
 
まだ解明されていないこともいくつかある(中也が夢を見ないことの真相とか)けど、ひとまずそれは脳内補完することとする。朝霧先生曰く、ひとまずこれで中也の過去編は完結ということらしい。それにしても、本編で大した出演もないのにもかかわらず、こんなにしっかり過去を掘り下げ、二冊も小説を出しアニメ化までしてくれるなんて、、、なんてオタク思いな作者なんだ、、、。
というわけで、どうか、映画でもなんでもいいのでストブリアニメ化、どうぞ!よろしくお願いいたします!!金なら出す。